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痔を防ぐための基礎知識【肛門の仕組みと働き】 new よく見られている記事

2018年11月16日

肛門は2つの筋肉やクッション組織に取り囲まれています

私たちの口から体内に入った食べ物は、胃から十二指腸、小腸、大腸、直腸などを経て、便となって肛門から排泄されます。これを排便と呼びます。

直腸と肛門は、歯状線を境に分かれています。歯状線とは、私たちの身体が母親の胎内で形成されていく際、便の通り道をつくるために、下がってきた直腸と肛門部分の皮膚が接合した部分。歯のようにギザギザしていることから、歯状線と呼ばれます。

この接合によりできた肛門は、正確には肛門管という名称で、長さ約3センチ。内肛門括約筋と外肛門括約筋という筋肉に取り囲まれており、排便や排ガス時以外は締まっています。自律神経に支配されている内肛門括約筋を自分の意思でコントロールすることはできませんが、外肛門括約筋は自分の意思で締めたりゆるめたりすることができます。

実は、2つの肛門括約筋だけでは、肛門を完全に閉じることはできず、わずかなスキマができてしまいます。そのスキマをふさぐクッションのような役割を果たしているのが内痔静脈叢と外痔静脈叢で、たくさんの血管が集まった結合組織でできています。

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痔には「いぼ痔」「切れ痔」「あな痔」の3つの種類があります

「痔は男性がなるもの」というイメージが強いかもしれませんが、便秘や妊娠・出産がきっかけで痔に悩む女性も多く、痔は男女共通の病気といえます。痔は大きく3種類に分けられ、肛門周辺がうっ血する「いぼ痔(痔核)」、女性に多い「切れ痔(裂肛)」、男性がなりやすい「あな痔(痔ろう)」があります。

「いぼ痔(痔核)」は、クッション組織がうっ血してふくらんだ状態です

男女ともに悩む人が多い「いぼ痔」は、肛門付近でクッションのような役割を果たす内痔静脈叢や外痔静脈叢に発生します。このクッション組織には多くの静脈が集中していますが、加齢とともにゆるみや乱れが生じます。また、排便時の“いきみ”による強い腹圧により組織の血めぐりが悪くなって、うっ血したり血管が切れたりします。その結果、腫れて突出した部分が、いぼ痔です。

いぼ痔は、歯状線よりも直腸側にできる内痔核と、肛門側にできる外痔核に分けられます。直腸内の粘膜には痛覚がないため、内痔核の初期は痛みを感じず、排便時の出血が主な症状です。そのままにしておくと、肛門から飛び出してしまい、悪化すると指で押し込んでも戻らない「脱肛」が起こり、便や粘液が下着につく、肛門周囲の皮膚がかぶれるといった不快な症状を招きます。

一方、排便時のいきみや重い荷物を持ったときの腹圧などで、突然の激しい痛みを感じるのが、外痔核です。内痔核とは違って強く痛むのは、歯状線より肛門側の皮膚には痛覚が存在するためです。

「切れ痔(裂肛)」は、肛門部分にできた“傷”の痛みや出血です

歯状線よりも肛門側の皮膚にできた傷の痛みや出血が、「切れ痔」です。最大の原因は、便秘で硬くなった便が通過するときに、皮膚を傷つけてしまうことです。下痢の勢いのよい便や水分が多い便による刺激や、内肛門括約筋の緊張による血行の悪化などでも、切れ痔を招きやすくなります。

切れ痔になると、排便時にポタポタと出血する、排便時にピリピリと痛む、排便後も痛みが続くといった症状が起こります。排便時の強い痛みを避けたいあまりに、便意が起きても我慢してしまう人が多くいます。すると、排泄できないままの便がどんどん硬くなり、排便時の痛みがさらに増すのに加え、傷口の炎症も悪化するという悪循環に陥りがちです。やがて肛門が狭くなって(肛門狭窄)ますます便が出にくくなり、重症化する場合もあります。

「あな痔(痔ろう)」は、肛門周囲の化膿から起こります

歯状線には、小さなポケットのような“あな”が6~11個ほどあり、内肛門括約筋と外肛門括約筋の間を通る肛門腺へとつながっています。通常はここに便が入り込んでも炎症を起こすことはありません。

しかし、免疫力が低下しているときに、下痢による水のような便が流れ込むと、大腸菌などの細菌に感染し、化膿する場合があります。すると、うみが肛門腺を通ってお尻の皮膚のほうへと移動する際、強い痛みや腫れ、発熱を伴います。これを「肛門周囲膿瘍」と呼びます。便秘などで強くいきむ習慣のある人や、いきむ力の強い青年期から中年期の男性、アルコールのとりすぎで下痢がちな人が肛門周囲膿瘍になりやすい傾向があります。

肛門周囲膿瘍をきちんと治療をしないままでいると「あな痔」になり、排便時以外にもうみや分泌物が出て下着が汚れたり、肛門の機能が低下したりします。自然に治るケースはほとんどなく、手術が必要なので、思い当たる人は早めに受診してください。

痔の原因の多くは、生活習慣に潜んでいます

私たち人間は、直立二足歩行で活動しています。重い頭や上半身を支える下半身には、大きな負荷がかかっています。このような人体構造に、望ましくない生活習慣が加わると、痔を招きやすくなります。

トイレで出血や血便を見つけると、「きっと痔だ」と自己判断して放置する人も多いようです。しかし、大腸がんのサインというおそれもあります。出血や血便に気づいたら、まず病院で診察してもらいましょう。痔の予防や早期段階の改善には、毎日のセルフケアが有効です。

まず、3種類の痔の大きな原因は、便秘や下痢といった排便トラブルです。食生活の見直しや、ストレスや疲労の軽減などで、慢性的な便秘や下痢を改善しましょう。

肛門部の血行が悪くなり、うっ血すると、発痛物質や疲労物質を流すことができず、「いぼ痔」や「切れ痔」につながります。特に、冷える環境で過ごす人や同じ姿勢を長時間続ける人は、血めぐりが悪くなりがちなので、適度に身体を動かすとともに、使い捨てカイロや重ね着で温める習慣を身につけましょう。

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