吉野一枝 先生 (よしの女性診療所院長)
2016年12月28日
「生理中はこれをしてはいけない」「排卵はきっとこう起こっているはず」など、月経にまつわる間違った思い込みや知識を持っている人が少なくありません。この記事では、月経中を快適に過ごすために役立つ知識や、女性の体の仕組みについての興味深い情報をお届けします。あなたの思い込みや疑問をチェックしてください。
運動すれば、全身の血行が促進され、気分も爽快になるので、月経中でも体を動かしましょう。ただし、月経中はホルモンのリズムが大きく変化する時期なので、無理をせず、体調をみながら楽しんでください。プールで泳ぐ場合はタンポンを使います。
月経中でも適度な運動はおすすめ。無理をせず楽しみたい
清潔なお湯につかる分には問題ありません。血行を促進すれば、発痛物質が代謝されるので、月経痛が気になる人にはむしろ入浴はおすすめしたい生活習慣です。月経中にお風呂に入るのが気になるなら、足湯で体を温めるのも効果的です。
お風呂や足湯で温めると、月経痛がやわらぐ場合も多い
外陰部(膣周囲)はとてもデリケートな粘膜で、酸性に保たれています。アルカリ性の石鹸やボディソープは避け、洗いすぎやこすりすぎに気をつけながら、ぬるま湯でそっと洗ってください。ただし、膣の中には自浄作用もあるので、中まで洗う必要はありません。敏感肌の人は、素材に配慮した生理用ナプキンをおすすめします。ニオイが気になる人は、ナプキンを取り換える頻度を少し増やしてみましょう。いわゆる「多い日」が過ぎたことに安心して、ナプキンをつけっぱなしにしているのが、ニオイやムレの原因かもしれません。
生理用ナプキンは、素材やつけ心地もさまざま。自分の好みや肌に合ったものを選びたい
早く初経(初潮)を迎えたということは、卵巣の機能が活発に働いている証拠。閉経が遅い傾向があります。生まれたとき卵巣にあった100万個もの原始卵胞は徐々に減っていき、排卵が始まるとさらに大幅に減少します。ただし、閉経の時期を決めるのは、残った卵胞の数ではありません。では、何が閉経の時期を決定づけるかというと、卵巣ホルモン(女性ホルモン)の状態です。個人差もあるので一概にはいえませんが、ストレスや喫煙などの生活習慣は卵巣ホルモンを低下させるので、閉経が早まる傾向があります。
脳の視床下部からの指令を受けて、卵巣ではいくつもの原始卵胞が育ちます。そのうち1つの卵胞が卵巣の皮を破って飛び出すのが、排卵です。左右の卵巣から交互に排卵されるわけではなく、最もいい状態に成長している卵胞が排卵します。したがって、卵巣が一つしかない場合でも、一番よく育っている卵胞が飛び出すことで、排卵が毎月起こります。
子宮の左右に卵巣があるのは事実だが、最もよい状態の卵胞が排卵される
婦人科には月経中でも遠慮せず受診してください。月経中でなければわからない場合もあるので、気になることができたときが受診のタイミングです。基礎体温表をつけている人は忘れずに持参を。そうでない人は、最近の月経の周期や日にちを確認しておくことをおすすめします。ただし、がん検診が目的の場合は、月経が終わってからのほうがよいでしょう。
毎日の計測が続かない場合は、月経の日にちや健康状態についてメモしておくだけでも、周期や体調の把握に役立つ
昔と今で初経や閉経の年齢に大きな差はありませんが、昔の女性のほうが生涯に迎える月経の回数が少なかったのです。例えば明治時代の女性の場合、10代で初経がくる頃は、当時では結婚適齢期。結婚した後、妊娠・出産・授乳の間は月経が止まります。現代の女性より出産する子どもの数が多く、平均寿命は44歳程度(*1)と短かったので、一生の中で経験する月経の回数は、現代女性よりぐんと少なかったといえるでしょう。