風邪や花粉症を防ぐための基礎知識【鼻や喉の仕組み】

本間生夫 先生(東京有明医療大学学長)

2019年11月27日

鼻の中や喉にウイルスなどが付着するのが風邪の原因です

風邪はウイルスやバクテリアなどの原因微生物が体内に侵入することで起こります。風邪の原因となる微生物の80~90%がウイルスで、それ以外には細菌(バクテリア)もあります。

これらの原因微生物が、くしゃみなどで飛散された飛沫を介して鼻や口から入り、鼻腔から咽頭までの上気道の粘膜に付着すると、20分で細胞の中に入ってしまうといわれています。風邪は医学的には急性上気道炎(かぜ症候群)と呼ばれ、炎症の5大症状(赤み、腫れ、痛み、熱、機能障害)がみられます。また、上皮細胞が傷つくと、受容器が刺激されて咳が出ます。

原因微生物が体内に入って感染しても、環境や感染者の要因によって、発症する場合としない場合があります。インフルエンザの原因もウイルスですが、単なる風邪ではなく、症状が重くなります。

花粉に対する過敏症が続くと花粉症を発症します

花粉症も、体内に異物が侵入することにより発症します。ただし、原因となるのは、ウイルスや細菌ではなく、スギなどの花粉です。外鼻孔(鼻の穴)や口、目から体内に侵入した花粉は、鼻や喉の粘膜やまぶたの結膜に付着して、アレルギー反応を起こします。

花粉を異物として認識して抗体がつくられ、くしゃみや鼻汁、鼻づまり、目のかゆみなどを引き起こします。この抗体は時間をかけてつくられるので、花粉を取り込んだ全ての人がすぐに発症するわけではなく、あるとき突然、花粉症になります。

鼻と喉は密接につながり、呼吸活動を担っています

鼻には、においを感じる、異物の侵入を防ぐ、空気を加温・加湿するといった働きがあります。喉には、食べ物の通り道となって次の器官に送る、声を出す、胸郭を固定するなどの働きがあります。

私たち人間は、呼吸によって空気中の酸素を体内に取り込み、栄養素を燃焼させてエネルギーに変え、二酸化炭素を排出しています。人間の生命維持に不可欠なこの呼吸活動を担っているのが、呼吸器の一部である鼻と喉です。外鼻孔(鼻の穴)から取り込んだ空気は、血管が密集した鼻腔(鼻の中)で加温加湿され、咽頭へ。その後、喉頭や気管を通って肺へと送り込まれます。

鼻と喉の防御機能には「線毛(繊毛)」が関わっています

加温・加湿により線毛の運動性が高まると、感染などへの防御機能も高まる。冬場の健康維持などに温めや乾燥予防が推奨されるのは理にかなっているといえる

空気と一緒に鼻や口から取り込んだ異物を防御する上で重要な役割を果たすのが、鼻や喉に生えている毛です。鼻の中の毛には2種類あり、よく知られているのが、鼻孔に生えている鼻毛です。そして、その奥の鼻腔に広がる粘膜の線毛細胞には、直径1,000分の1ミリ程度の細くて短い線毛が生えており、咽頭などの粘膜にも存在します。

大きなゴミやホコリをシャットアウトするのは、鼻毛の役割。鼻孔を通り抜けて入ってきた小さな小さなゴミやチリ、花粉は粘液に付着し、ベルトコンベアのように動く線毛によって喉から口のほうへと運ばれます。そして、たんとなって出たり、食道から胃に入ったりするなどの適切な処理が行われるのです。

しかし、線毛による防御機能が低く、ウイルスや花粉などが鼻や喉の粘膜に留まってしまうと、前項のようにさまざまな炎症が発症します。タバコの煙によって喉の痛みが起こる場合もあります。

加温加湿により、線毛の異物除去効果が高まります

線毛の動きを活発にするのが、加温と加湿です。鼻や喉の粘膜の血めぐりが促進され、線毛の働きが活発になり、外敵や異物を防御する機能が高まるからです。逆に言うと、線毛の弱点は寒さと乾燥なのです。

口呼吸より鼻呼吸が健康によいといわれるのは、鼻毛や線毛による防御機構が発揮されるからだけではありません。空気は鼻孔の中に入ると温められ、鼻粘膜の粘液から湿気を加えられます。また、肺の中は100%の水蒸気圧で飽和した、いわば“湿った状態”です。鼻腔や咽頭を通る空気も加湿された状態が望ましく、鼻呼吸をすれば、適度な温度と湿度に調整された空気を肺に送りこむことにもつながるというわけです。

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