
2016年9月2日
尿とは、腎臓に流れ込んだ血液がろ過されたもの。水分、不要なミネラル、老廃物などが含まれています。腎臓でつくられた尿は腎盂(じんう)に集められた後、尿管を通って膀胱にたまり(蓄尿)、尿道を通って体外へと排出(尿排出)されます。
膀胱は伸縮する臓器で、蓄尿する間は弛緩します。同時に、尿道の周囲にある尿道括約筋(骨盤底筋群の一部)がきゅっと収縮することで、尿をもらすことなくためています。反対に、排尿する間の膀胱は収縮し、尿道括約筋は弛緩します。
これらの動きをコントロールしているのは、脳からの指令や自律神経です。蓄尿のときは主に交感神経が働き、排尿のときは副交感神経が働きます。
<蓄尿と排尿の仕組み>
成人の1日の尿量は1,000~1,500mlで、気温や水分摂取量によって変化します。尿の回数は朝起きてから寝るまでの間に6回前後が平均で、7回までが正常とされています。65歳を超えると、就寝中に1回程度起きる人が増えます。
体格によって異なりますが、成人が膀胱にためることのできる最大量は200~500ml。「おしっこをしたい」と尿意を最初に感じるのは、150~200mlほどたまったときです。その時点から1時間くらい我慢できるのが正常とされ、昼間の尿のペースは3~4時間ごとというのが好ましい状態です。
これらの数値と少し違うからといって異常があるというわけではありませんが、日常生活に著しい不便を感じている場合は受診をおすすめします。「排尿時に痛みを感じる」「尿がとても出にくい」「排尿の量が異常に少ない、または多い」「尿の色が大きく変わった」という場合は、病気が潜んでいる可能性も考えられるので、病院へ行きましょう。
「トイレの回数が多い」「夜中に何度も起きる」「我慢できなくて尿もれをするのが増えた」という場合、「もう歳だから」とあきらめてしまう人が多いようです。実際には、頻尿や尿失禁には何らかの原因があり、ライフスタイルを見直すことで改善するケースが少なくありません。
そのために始めたいのが、尿の回数や量を記録する習慣です。排尿日誌をつけて排尿のパターンを知れば、尿の悩みの原因が推測できることもあります。「トイレの回数が平均の範囲だった」とわかり、安心感が生まれ、悩みが解決する人もいます。
<排尿日誌の一例>
男性の尿道は約15~20cmと女性よりも長く、膀胱から尿道口までの間に尿道が2カ所で屈曲しています。尿道には男性特有の前立腺という臓器がぐるりと巻きついています。前立腺には精液の一部をつくりだす働きがあり、下部にある筋肉は排尿にも関わっています。
<男性の骨盤内臓器>
前立腺は加齢とともに肥大し、膀胱や尿道を圧迫するようになります。すると、「すぐにトイレに行きたくなる」「尿がすぐに出ない」「残尿感がある」といった現象が起きます。
尿をすっきりと出し切ることができず、排尿後に数滴もれてしまうのも、前立腺肥大による症状として知られています。しかし、若い年代の人でも、下着をしっかり下ろしきらず、尿道をきちんと下に向けないまま排尿すると、尿道に残った尿がポタポタと垂れてしまうことがあります。その場合は、前立腺よりも下に尿が残っている感覚があるので、排尿後のもれが気になる人は注意して確認してみてください。
前立腺が肥大している人には、膀胱が過剰に活動しているケース(過活動膀胱)が多くみられます。過活動膀胱では、膀胱に尿がたくさんたまっているわけではないのに膀胱が過敏となり、頻繁にトイレに行きたくなります。
また、前立腺肥大により排尿がスムーズにできなくなり、膀胱に尿が残ったまま排尿を終えた結果、次に尿意をもよおすまでの時間が短くなることでも、頻尿を招きます。
女性の尿道は男性よりも短く、たった3~4cmほど。しかもまっすぐ下へと伸びているので、男性に比べて尿もれ(尿失禁)をしやすい傾向にあります。骨盤内にある臓器をハンモックのように支えている骨盤底筋群という筋肉が、加齢や妊娠出産、便秘や肥満などでゆるむことでも、尿のトラブルが起こりやすくなります。
<女性の骨盤内臓器>
女性の尿もれの多くは、お腹にかかった力(腹圧)によって、ゆるんでいた骨盤底筋群が尿道を締めきれなくなったときに起こります。骨盤底筋群は男性の体内にも存在しますが、女性の骨盤底筋群のほうがたくさんの臓器を支えているので、尿の悩みと直結します。
また、膀胱がいわゆる知覚過敏になっている(過活動膀胱)人も、尿もれや頻尿になります。膀胱には少量しか尿がたまっていないのに、ささいな刺激に膀胱が過敏に反応して収縮することで、切迫した尿意をもよおしてしまい、「頻繁にトイレに行く」「急いでトイレに入っても間に合わない」という現状が起こります。
尿のトラブルに悩む女性には、骨盤底筋群のゆるみと膀胱の知覚過敏の両方の状態を抱えている人が多いことも覚えておきましょう。
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