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2016年12月27日

睡眠には、脳や体の疲れをとる以外にも、さまざまな働きがあります

睡眠の最も大きな役割は、起きている間に使った脳と体を休ませることです。肉体的な疲労は横になって休めばある程度は解消できるのに対し、脳は目を覚ましている間は休息できません。私たちの体は、眠っている間に熱を逃がして脳を冷やす仕組みになっており、これを熱放散と呼びます。昼間の活動時には高く保たれている脳の温度を、睡眠中に冷やすことで、疲れを回復させているのです。

私たちが眠っている間は、骨や筋肉の成長を促したり、ストレスを受けて傷ついた細胞を修復したりする成長ホルモンが脳から分泌されます。睡眠にはその他にも、細菌やウイルスに抵抗する「抗体」をつくる、ストレスを解消する、その日の出来事や学習したことを記憶として脳に刻み込むといった役割があります。

睡眠と覚醒には、メラトニンと副腎皮質ホルモンが深く関わっています

私たちが眠りにつく1~2時間前になると、眠気を誘って眠りを保ち続けるメラトニンというホルモンが分泌されます。同時に、体内の熱が外に放散され、脳の温度が下がります。メラトニンとは逆に覚醒作用を持っているのが、副腎皮質ホルモンです。朝方になると分泌が始まり、脳の温度が自然に高くなって、やがて目覚めを迎えます。

私たちの体が眠る準備は、就寝時刻の1~2時間前に始まります。しかし、就寝時刻の2~4時間前には、覚醒力が一日のうちで最も高くなるという逆行現象が起こります。一日の疲れがたまり眠くなる一方のはずの夕刻から夜にかけて、元気に食事を楽しんだり残業して仕事をこなしたりできるのは、このためです。

就寝時刻の2~4時間前の時間帯は覚醒力が高まり、早く眠ろうと思って寝床に入ってもなかなか寝つけないので、「睡眠禁止ゾーン」または「覚醒維持ゾーン」と呼ばれます。

<睡眠に関わるホルモンの分泌量と脳の温度の変化>(図1)

睡眠に関わるホルモンの分泌量と脳の温度の変化

図1/厚生労働省e-ヘルスネット「眠りのメカニズム」より作図

睡眠は、レム睡眠とノンレム睡眠という2つの状態で構成されています

私たちの睡眠は、「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」の全く異なる2つの状態に分けられ、脳の活動はさまざまに変化しています。

一晩の眠りのうち約2割を占めるレム睡眠は、全身の筋肉をゆるめ、エネルギーを節約して体を休めるのが主な目的といわれています。閉じたまぶたの内側で眼球が素早く動いている(Rapid Eye Movement)ことから名付けられました。夢を見るのはレム睡眠のときです。

脳の活動がさらに低下するノンレム睡眠では、眠りの深さによって4段階に分けられます。「深い眠り」といわれるステージ3とステージ4は、若年者よりも高齢者のほうが短いのが特徴です。「夜中に目が覚める」「眠りが浅い」という悩みが高齢者に多いのは、このためです。

<健康な大人(若年者)の典型的な夜間睡眠パターン>(図2)

健康な大人(若年者)の典型的な夜間睡眠パターン

眠りにつくとまずノンレム睡眠の状態になり、レム睡眠は90分おきに現れる。この周期が一晩に4~5回繰り返される。睡眠は寝始めの約3時間が最も深く(=徐波睡眠)、睡眠欲求が低下する朝に向けてしだいに浅くなる

体内時計の周期は、朝日を浴びるとズレがリセットされます

私たちは夜になると眠くなり、朝になると自然に目が覚め、それに伴って体温が変化し、さまざまなホルモンが分泌されます。一日のうちに自然に起こるこれらの生理現象の変動を概日リズム(サーカディアンリズム)と呼び、このリズムを支えているのが「体内時計」です。最近の研究により、個人差はありますが平均24時間10分前後の周期であることがわかりました。

ぴったり24時間ではない体内時計の周期を、24時間という社会的な生活リズムに合わせるには、体内時計をリセットしてズレを修正する必要があります。これを主に行うのが、「光」です。朝日を浴び、目にしっかり光が入ると、体内時計がズレを調整し、血圧や脳の温度が活動に適した状態になります。

眠気を促すメラトニンの分泌は、朝に光が目に入ってから約14時間後に始まります。つまり、「早寝早起き」よりも「早起き早寝」のほうが、睡眠の仕組みを適切に表現しているといえます。

体内時計に最も大きな影響を与えるのは光ですが、食事や運動といった要素が、時計の調節に関わることもわかってきました。規則正しい食生活や運動する習慣は、健やかな眠りのためにも重要なのです。

深部体温を急激に下げると、良眠を得やすくなります

深部体温とは、脳や内臓の温度のこと。私たちの深部体温は、夕方過ぎから就寝3~4時間前にかけて最も高くなった後、入眠に向けて徐々に低下していき、起床の1~2時間前に最も低くなります。

最近の研究で、就寝前1~2時間の深部体温の降下が急であるほど、寝つきがよく、深い睡眠を得られることが明らかになりました。温度を急降下させるために有効なのが、入浴や運動です。入浴は冷やすのとは真逆の行動ですが、深部体温が下がっていくべきはずの時間帯にあえて“加熱”して深部体温を急激に上げることで、エアコンや消防車である睡眠を誘発するマッチポンプの役割を果たすのです。

入浴するときには、お湯の温度にも気を配りましょう。夏は38℃、冬は40℃前後の熱すぎない程度のお湯には、心身をリラックスさせる働きがあるので、昼間の疲れがほぐれることでも眠りにつきやすくなります。また、目の周囲を温めるのも効果的です。目の周囲の皮膚は温度変化に敏感なため、温めることで副交感神経が優位になり入眠しやすくなります。

▼関連記事:睡眠と入浴―すぐに役立つ健康入浴法(6)

適正な睡眠は人それぞれ。昼間に気分よく過ごせれば問題ありません

入眠しやすい時間帯や適切な睡眠時間には大きな個人差があり、運動量や生活習慣、年齢などによっても異なります。夜中に目が覚めるのは中高年になれば珍しいことではなく、不安や悩みがあると一時的に不眠症状が出る場合もあります。「8時間寝たほうがよい」という目安には根拠がなく、毎日8時間しっかりぐっすり眠れるのは中学生くらいまでだとわかっています。

体質の「朝型」「夜型」は変えられませんが、生活を変えることはできます

ライフスタイルや睡眠について「朝型」「夜型」という言葉をよく使います。実は、生活スタイルが夜型であることと、個人の体質や睡眠リズムが夜型であることは、全く違います。

つまり、午後に起床して夜間に働いて朝になって寝るという社会的なリズムが「夜型の生活スタイル」、その人に本来備わっている体内時計の周期が長いため自然に寝つける時刻が遅くなるのが「夜型の体質や睡眠リズム」です。

朝型体質の人は、規則正しい生活に向いているものの、深夜残業や交代勤務などに適応しづらい傾向があります。夜型体質の人は、早寝早起きが苦手ですが、夜勤や海外旅行などの変化に対応しやすいのが特徴です。

夜型体質の人でも、朝型の生活を続ければ、体内時計が徐々に前倒しになり、早起きが楽になります。ただし、体質そのものが朝型になるわけではありません。生活リズムの変化などをきっかけに、本来の体質に合った夜型生活に戻ってしまうケースが多くあります。

睡眠日誌で睡眠を「見える化」すると良眠効果が期待できます

不眠に悩む人が取り入れたいのが、睡眠日誌です。睡眠時間を客観的に確認したり、計画された時刻まで「寝ない」という方法を実践したりするのに役立ちます。記録することで、「実は週の何日かは眠れていた」「睡眠時間と翌日の倦怠感は関連がなかった」とわかり、安心する人もいます。

不眠や睡眠不足には、さまざまな健康リスクがあります

睡眠障害とは、睡眠の質や量に問題があり、それによって心身に何らかの問題が生じている状態を指します。不眠症が知られていますが、それ以外にも睡眠時無呼吸症候群や過眠症といったさまざまな種類があります。睡眠の問題が長期間続いたり、そのせいで日常に不便を生じたりしている場合は、病院に行くことをおすすめします。

なお、不眠も睡眠不足も、睡眠時間が短いという点では共通していますが、全く異なる睡眠問題です。眠る時間があって眠ろうとしても眠れない「病気」が不眠症、眠りたいのに眠る時間がない、あるいは眠ろうとしない「誤った睡眠習慣」が睡眠不足です。

不眠も睡眠不足のどちらも、記憶力や判断力などの「認知機能」が低下することで、生活の質が落ちるのに加え、業務上のミスや事故などの致命的なトラブルにつながる可能性があります。特に慢性不眠症はとても治りにくいので、早期対処することが大切です。

※この記事の内容は、健康な大人が朝起床して夜就寝する場合の生活パターンに基づいています。夜間勤務の人などは該当しない可能性があります。

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