
2016年7月8日
垢の正体を知っていますか? 垢はもともと、表皮の内側で新しく生まれた細胞でした。その後、しだいに外側へと押し上げられ、少しずつ垢となって剥がれ落ちます。「たかが垢」と思うかもしれませんが、そのままにしておくと、皮膚への刺激になったり、疾患の原因になったりすることも…。きちんと落として、肌の健康を守りたいですね。そこで今回は、垢をキーワードに古今東西をのぞいてみましょう。
各家庭に浴室がなく、町湯も発達していなかった時代には、寺院で行われる“施浴(せよく)”が主な入浴の場。庶民や病人にとっては医療的な施しの意味もありました。
施浴のもっとも古い記録は、聖武天皇の妃である光明皇后による「千人風呂」です。信仰心のあつい光明皇后が仏のお告げに従って、1,000人の病人の垢を落とすと、病人が金色の仏となって消え去ったという言い伝えがあります。
入浴時に使う、体の汚れや垢を落とすための道具は、各地で発達しました。古代ローマでは、オリーブ油などでつくられた香油を体に塗り、温浴室で毛穴を開かせた後で、金属製の大きなスプーンのようなもので垢をかき落としていました。7世紀のバグダッドにあったハンマムという浴場では、馬のたてがみでつくった手袋で体をこすっていたそうです。
日本では、麻布(まふ)や手拭いのほか、現代の私たちにも垢すり用のアイテムとしてなじみのある乾燥ヘチマなどが用いられてきました。乾燥させたヘチマは、水やお湯につけるとスポンジのように柔らかくなるのが特徴です。